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徳島地方裁判所 昭和23年(行)15号 判決

原告

安丸理一

外一名

被告

御所村農地委員会

主文

本件訴を却下する。

訴訟費用は原告等の負担とする。

請求の趣旨

被告御所村農地委員会が昭和二十二年十月十日別紙記載の農地について爲した農地買收異議申立却下決定並に被告德島縣農地委員会が昭和二十二年十二月二日爲した上記却下決定に対する訴願棄却の裁決はこれを取消す、訴訟費用は被告等の負担とするとの判決を求める。

事実

原告等は昭和二十二年十月五日附書面で被告御所村農地委員会に対し原告等所有の請求趣旨記載の農地に対する買收計画の異議申立をしたところ、同委員会は同月十日これを却下したので更に被告德島縣農地委員会に訴願したところ同委員会は同年十二月二日原告等の右訴願を棄却する旨の裁決をし、同裁決書は昭和二十三年三月二十三日原告等に送達せられた。そもそも原告等が本件買收計画に対し異議申立及び訴願をした理由は、本件買收計画は地主の保有限度を超えた農地に対して立てられたものであるが、原告両名の所有小作地は板野郡御所村吉田字北門三十一番の五外八箇所で合計八反五畝二十八歩であるところ、原告等はその中請求趣旨記載の北門三十一番の五田九畝九歩を含めた合計四反七畝八歩を保有し、川久保八十一番の畑一反七畝歩の中四畝歩を含めた合計三反八畝二十歩を買收するやうに希望する旨を申し出たところ、被告御所村農地委員会は原告等の右申出を無視して、右北門三十一番の五田九畝九歩を買收計画中に入れ、川久保八十一番畑一反七畝歩の中四畝歩を買收計画より除外したのである。然しながら右北門三十一番の五田九畝九歩の土地はもと原告家の旧宅地で原告家の祭神と井戸があり、又他の原告等小作地への用水路が通つていて、もしこれが買收されて他人の所有地となるときは用水路や井戸の使用が不便となる等色々な支障を起すことゝなる。尚右小作地は原告冢が戰時中勞力不足の爲大住忠四郞に一時賃貸したものであるがやがて賃貸借解約の上返還を受け自作したいと思つている又川久保八十一番畑一反七畝歩は原告等が全部買收を申し出ているのにかかわらずその中一反三畝歩を買收して殘りの四畝歩を買收していないが原告等にとつてこのやうな処置がどのやうな理由で爲されたのか理解できない。よつて右原告等の希望通り買收計画を変更してもらふ爲請求の趣旨の通り本訴請求に及んだ次第であると述べ、被告等の抗弁に対し、本訴出訴期間が經過したのは被告等の怠慢によつて裁決書の送達が遲れた爲である。と述べ、立證として甲第一號証を提出し、乙第一號証の成立を認めた。

被告等訴訟代理人は、原告等の訴を却下する。との判決を求め、先つ抗弁として、本訴は出訴期間を経過した後提出せられた違法な訴であるから却下せらるべきものである。即ち自作創設農特別措置法による行政処分の取消又は変更を求める訴は処分の日から二月以内でなければ提起できないことになつていて、本件のやうに改正法律施行の日である昭和二十二年十二月二十六日以前にした行政処分については前記二月の期間は改正法律施行の日から起算することになつているから原告等は遲くとも昭和二十三年二月二十六日までに本訴を提起しなければならないものであるのに、本訴は右出訴期間を経過した昭和二十三年四月十七日に提起せられたのであるから明に違法である。と述べ本案に付諸請求棄却の判決を求め原告の請求原因とするところは何れも被告御所村農地委員会が自作農創設特別措置法に基いてその權限内で具体的に定めた買收農地の選定が原告等の希望に沿はないというだけであつて右処分の違法なことを理由にしていないのであるから、この点においても原告等の請求は理由がない尚原告主張の請求原因事實中冒頭より裁決書が送達せられたという部分まではこれを認めるがその余を全部否認する。と述べ、立証として乙第一号証を提出し甲第一号証の成立を認めた。

理由

先づ本訴が出訴期間経過後に提起された違法な訴であるか否かの点を檢討するに原告主張の訴願棄却の処分が昭和二十二年十二月二日に爲され、本訴が昭和二十三年四月十七日に提起されたことは当事者間に爭のないところである。果して右の通りであれば、原告等は自作農創設特別措置法第四十七條の二、同法附則第七條に從ひ遲くとも昭和二十三年二月二十六日までに本訴を提起しなければならなかつたものであるのに右期限を経過して本訴を提起したことになるから本訴は不適法であるといわなければならない原告がその主張のように右処分のあつたことを知つた時が既にその二ケ月以後である三月二十三日であるとしても各法條の文理解釈上右出訴期間の算定を動かすに由ないものというべきである。よつて原告等の訴却下すべきものとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九條を適用して主文の通り判決する。

(目録省略)

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